前回記事のコメントに、次のような質問が寄せられました。
いつも悩んでいることですが、英語ではone of the best+(複数名詞)という形がありますね。このような場合に英語と日本語での「最も」の意味が大いに違うのではないかと思うのです。the bestがいくらあってもいいのかなと。であれば、一定の基準を超えた場合、みんなミスワールドにしちゃえ。全員幸せに思うし、こちらもあえて差をつけなくたって困らないし。
by オテナの塔 (2006-12-04 00:44)
はーい、お答えしまーす!
ミス・ワールドを例にとれば、
She is one of the most beautiful ladies in the world.
みたいな文のことですよね。
コレをぼくの持論である「カタチ・イミ・キモチ」から分析すると、このカタチは、いわゆる1つの「婉曲表現」だと解釈できます。
(以下、そう考える理由です。)
とある国代表のミス○○は、その国の中で「ただ一人」最も美しいと認められた女性(the most beautiful lady)なわけです。
(「私の方がもっと美しいわよ!」と主張する人がいたとしても、それはまぁ、別問題。)
各国の the most beautiful lady が世界中から1箇所に集まれば、その時点で the most beautiful ladies(複数形)となりますね。
その中の誰か1人についてメディアが紹介する際に、例の文が使われるワケですよ。
She is one of the most beautiful ladies in the world.
カタチはいわゆる「最上級」。
直訳すると「彼女は世界で最も美しい女性の一人だ。」となります。
でもこの英文に込められている本当のイミは違います。
ここで、これを言った(書いた)記者のキモチを考えてみましょう。
本当の一番が誰なのかを厳密に言おうとしているのでしょうか。
違いますよね。
そういうキモチはこの記者にはありません。
彼女が「1番」かどうかなんてことをこの記者は言おうとしているのではありません。
あえて厳密に言うのを避けているんです。
こう紹介しておけば、彼女のプライドを傷付けることはないからです。
さらには、その年のミス・ワールドが完全に決定したとしても、各国代表が、それぞれの国で the most beautiful lady であることには変わりがないわけですし。
別の例で。
Tokyo is one of the biggest cities in the world.
Tokyoは実際には世界一大きい都市ではありませんよね。
なのに、こういう表現が現実にある。
この文も、本当の一番がどこなのかを厳密に言おうというキモチがないんですね。
ミス・ワールドの例と同じです。
この文が言いたいのは
「厳密な世界最大都市がどこかはともかく、ひとまずTokyoは大都市ですよ。」
ってことだけなんです。
このキモチを踏まえると、日本語は次に相当します。
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Tokyo is one of the biggest cities in the world.
東京は世界有数の大都市です。
(「の1つ」はあえて訳出する必要はない。)
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本日の結論!
「one of the best +(複数名詞)」という形は、英語にしては珍しい、回りくどくて遠まわしな婉曲表現であ~る。
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