さらに、フロムの精神分析運動の歴史に対する考えは思想的に極めて刺激的であり、彼の生き方と同僚にに対する関係とは、私が「フロイト崇拝」と呼ぶものの啓蒙的な実例となっている。師に対するこの崇敬の態度の構造および内容と根底的決定因子は、精神分析修史において最もなおざりにされている問題である。入念に観察すれば、フロムの人生と思想はこの現象に満ちている。たとえば、パトリック・マラヒーの『エディプス---神話とコンプレックス』の序文でフロムは、同世代のある人々に警告している。「信じやすい大衆は、今後何世紀も記憶に残る天才と、・・・・彼の発見をもとに付け加え、修正し、訂正する者たちとを区別できないことが多い。実際、巨人の肩に乗っていると巨人より背が高くなるから、彼を見下すことができるのだと思う者がいるものである」(マラヒー1984、iv頁。)

フロムの遺産

  • 作者: ダニエル バーストン
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本