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訳者あとがき 3rd段落 [エーリッヒ・フロムの遺産]

著者バーストンは、フロムが少なくともアメリカにおいては、死後不当に軽視されていると感じ、フロムを正等に位置づけようとする。著者が最も重視するのは、フロムのフロイトとの関係である。フロムは無意識の領域にメスを入れたフロイトを高く評価したが、彼の生物学的、機械論的な衝動理論や父権主義的な枠組みは批判した。しかし、フロムはフロイトの天才を認め、その先駆的な業績には多大の敬意を払っていたのである。著者はこの二重感情に注目し、フロムを「忠実な野党」に分類している。そして、フロイトを取りまくさまざまな学者たちのフロイトに対する態度と、フロムのそれとを対比してみせる。フロイトという焦点を持つゆえに、それぞれの類似点や相違点が浮き彫りになるのであって、ライヒやマルクーゼとの対比も、そのためにいっそう興味深いものとなっている。

フロムの遺産フロムの遺産

  • 作者: ダニエル バーストン
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本



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訳者あとがき 4th to 6th段落 [エーリッヒ・フロムの遺産]

 本書はさらに、マルクス主義、バッハオーフェンの母権理論というフロムに大きな影響を与えた思想を取り上げ、次いであまり論じられることのないフロムの臨床上の貢献をも含め、実存主義、社会的性格など、フロムの本質的な問題へと論を進めていくのだが、著者はつねにフロムを精神分析の歴史の中に置くというだけでなく、さらに広くヨーロッパの思想の潮流の中に置くという、きわめて視野の広い態度を保っている。そのために著者が渉猟した文献は膨大な量にのぼっている。アメリカにおける精神分析の教科書の著者たちの不勉強を批判しているのも、この自信から来るのだろう。よく目の行き届いた、均衡のとれた叙述であり、フロムもすぐれた知己を得たというべきだろう。
 本書には多くの文献が引用され、その頁数まで明記されているが、読者の便宜を考えて、フロム自身の著書、およびライナー・フンクの伝記『エーリッヒ・フロム』については、ごく一部を除いて、文献リストに掲載した邦訳書の頁数に改めた。ただし、訳文は私たちのものである。なお、訳書のうち、たとえばフンクの伝記のように、私たちがドイツ語から訳したものについては、本書の引用と多少の異同があることを、つけ加えておく。本書の翻訳に当たっては、まず佐野五郎が全文を訳し、それに佐野哲郎が筆を加えた。
 出版に際してご苦労をおかけした紀伊國屋書店出版部の高橋英紀氏、および前任者の荒木好文氏に、厚く御礼申し上げる。

1995年12月

佐野哲郎

フロムの遺産フロムの遺産

  • 作者: ダニエル バーストン
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本



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【1】人と仕事-序文 1st段落 [エーリッヒ・フロムの遺産]

臨床心理学と社会心理学、および精神分析運動の双方に寄与した精神分析家たちのなかで、エーリッヒ・フロムは、一時期最も有名で多作な学者の一人であった。彼の著作『自由からの逃走』(1941)、『正気の社会』(1955b)、『愛するということ』(1956a)、そして『禅と精神分析』(1960d)はベストセラーとして、広く熱心な読者を獲得した。しかし、フロムの死後それらの著作は学問上ほとんど影響力をもつことなく、彼自身も忘れ去られようとしている。この知的伝記の目的は、フロムをそのような不当な運命から救い出し、彼の業績を批判的、歴史的視点でとらえることにある。それによって私たちは、高くそびえ立つ天才であるとか、あるいはフロイト思想の深い含意に対して現実に敵対はしなかったにしても心の底では冷淡であった、あいまいで説教好きな通俗学者であるというような、陳腐な決まりきった人物像を免れることができるだろう。

フロムの遺産

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  • 作者: ダニエル バーストン
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本

 


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【1】人と仕事-序文 2nd段落-上 [エーリッヒ・フロムの遺産]

臨床家、社会心理学者、実存主義的なヒューマニストとしてのフロムの本質的な価値は別として、彼の仕事が心理学と精神分析の歴史の上で興味深いものであるいくつかの理由がある。社会心理学に対するフロムの考察は独特のものであった。それは、十九世紀の精神科学(Geisteswissenschaften)のさまざまな提唱者たちの精神や複雑な理論を総合しようと試みるにあたって、現代社会における服従と同調の社会的、歴史的決定因子についての経験主義的調査計画を立て、カール・マルクスとジークムント・フロイトから借用した基本原理によって、社会心理学の過去と現在を結び付けようとした点にある。さらに、・・・

フロムの遺産

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  • 作者: ダニエル バーストン
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/12
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センター英語の対策◆文法1 [センター英語の文法用語ゼロ解説]

過去記事2012-11-11の再アップです。

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【1】人と仕事-序文 2nd段落-下 [エーリッヒ・フロムの遺産]

さらに、フロムの精神分析運動の歴史に対する考えは思想的に極めて刺激的であり、彼の生き方と同僚にに対する関係とは、私が「フロイト崇拝」と呼ぶものの啓蒙的な実例となっている。師に対するこの崇敬の態度の構造および内容と根底的決定因子は、精神分析修史において最もなおざりにされている問題である。入念に観察すれば、フロムの人生と思想はこの現象に満ちている。たとえば、パトリック・マラヒーの『エディプス---神話とコンプレックス』の序文でフロムは、同世代のある人々に警告している。「信じやすい大衆は、今後何世紀も記憶に残る天才と、・・・・彼の発見をもとに付け加え、修正し、訂正する者たちとを区別できないことが多い。実際、巨人の肩に乗っていると巨人より背が高くなるから、彼を見下すことができるのだと思う者がいるものである」(マラヒー1984、iv頁。)

フロムの遺産

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【1】人と仕事-序文 3rd段落 [エーリッヒ・フロムの遺産]

また、リチャード・エヴァンズとの会話においてフロムは、自分とカレン・ホルナイやハリー・スタック・サリヴァンとの違いについて次のように述べている。「私はまるで、・・・・・自分がフロイトの弟子であり、翻訳者であって、彼の最も重要な発見を明らかにし、それをやや偏狭なリビドー理論から解放することによって、豊かで深いものにしようとしている気がするのです。」(エヴァンズ1966、59頁)。

フロムの遺産

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【1】人と仕事-序文 4th段落-上 [エーリッヒ・フロムの遺産]

言い換えれば、実際に会ったことはなかったものの、フロムのフロイトに関する関係は、彼のアイデンティティの感覚の中軸となるものであり、進展し続けた彼の生涯の仕事の際立った特徴は、フロイトへの忠節を他の影響や思想と調和させるための絶え間ない努力をいかに反映していくかという点にあった。もちろん、これはひとり彼のみの運命ではなかった。それはフロイトの「忠実な野党」すべてが共有するものであった---彼らは、重要な問題についてフロイトと意見が異なるにもかかわらず、また、その結果、しばしば同僚たちのうちで信頼、尊敬、信用を失うこととなったにもかかわらず、フロイトに関する忠節のために精神分析の組織的な枠内にとどまった分析家たちである。(注1)ジョン・ゲドー(1984)は「忠実な野党」という述語を明確に異なった意味で用いる。

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